今観戦している試合が終われば、次は自分たちの番だ。 心臓の音がうるさい。 時間が経てば経つほど、目の前の試合から意識が離れていく。 手が少し震えているのが判る。 一週間。 決して長いとは言えない期間だが、その間に出来得る事はすべてやったという自負はある。 だけどそれはどのペアも同じだろう。 自信と不安が錯綜する。 彼もそうなのかな、と視線を隣にいる人物―――自分のパートナー―――に向けた。 気配を感じたのか、コートに向けていた顔が巴の方へ向く。 目があった。 一見してすぐに巴の緊張を見てとったのか、一瞬何か言いたげな顔をする。 が、結局何も言わずにただ笑みを返す。 ただそれだけ。 それだけで巴の不安は霧散した。 そうだ、おびえる必要なんてない。コートに立つのは一人じゃない。 単純だなぁ、と自分でも呆れるくらいだけど、それだけ彼を頼りにしてしまっているのだ。 プレイで頼りきりになるのはダメだと思うけど、心の支えにするくらいは大丈夫だよね。 そんなことを心の中で自分に言う。 目の前の試合が終了した。 二人は立ち上がり、肩を並べてコートへ向かう。 たった今まで観客だった身から、一転して今度は見られる側、選手としてコートに立つ為に。 負ければ終わりのトーナメント。 だったらひとつでも長く。 勝っている間は、このペアが続く。 最後の最後、頂点に立つ瞬間まで。 大丈夫。二人ならきっと。 二人だから、きっと。 〜FIN〜 |