今日も晴天だ。
照りつける太陽は容赦なく、まさにプールで遊ぶには絶好の日といえる。
「……」
「…………」
非常にだるそうに座る跡部の隣にやはりつまらなそうな顔をしたリョーマが座る。
視線の先には、プールで遊ぶ一群。
さっき向日がこちらを指差して何か言い、周りが随分ウケていたが大方引率者のようだとでも言われているんだろう。
「氷帝の人まで呼んでたんっスね」
リョーマが口を開く。
別に跡部と会話がしたい訳では全くないのだが、黙って座っているのもバカバカしい。
もっとも、バカバカしいといえばつい誘いに乗ってしまった事実が一番バカバカしいのだが。
「呼ぶかよ」
別に不機嫌な口調ではないが、跡部が一刀両断に否定する。
では、勝手について来たのだろうか、とリョーマは思う。
「お前と同じだ。
全員、巴が連れてきた。……大方、青学や女子ばかりじゃ肩身が狭いだろうとでも思ったんだろうよ」
呆れた。
それは、巴としては気を遣ったつもりなのだろうか。
いくらなんでもリョーマにだってわかる。
青学だろうが氷帝だろうが関係なく、巴以外は全員跡部にとって邪魔者でしかないだろう。
「……アイツ、ニブいから」
そう呟くと、何故か跡部がこちらを意外そうな目で見た。
「そう思ってんのか」
跡部がそう言うと、リョーマがこちらを不審そうに見る。
どうやら、本当にそう考えているらしい。
鈍いのはテメェだろ。
とは口に出さない。
ただ、口の端だけで笑って見せるとリョーマがこちらを睨む。
大概コイツもわかりやすい。
「カンだけはいいぜ、巴は。ガキなだけだ」
意識的にせよ無意識的にせよ、テニス以外の理由では二人にはならない。
かといって避けるでもない。
その理由はなんとなく推測できる。
だから、跡部はそれ以上は前に進まない。
「……あんまり余裕かましてると、あとで泣き見ますよ」
「そりゃテメェの方だ。
距離だけで優位に立ってるつもりか?」
一人前に挑発するような言い方をするリョーマを、軽く跡部はいなす。
やはり鈍いのはコイツの方だ。
誰かが間にいるだけでいいのならば、誘えば来る人間だけを誘う。
「それに」
だったら強く押さなければこんな場所には付き合わないようなリョーマをわざわざ引っ張ってくる必要はない。
自分がそこらの有象無象よりは巴の中で高い位置に属していることくらいはわかっているが、残念ながら視野が広い跡部にはもう一人、同じ高さにいる人間も見えているのだ。
「俺様もいつまでも待っててやるつもりはねえからな」
「跡部さんもリョーマくんも、そんなところに座っててもしょうがないじゃないですか!」
駆け寄ってきた巴が、二人の腕を引きプールへと誘う。
腕の長さも高さも違うので、バランスが狂う。
「危ねえから引っ張るな!」
「小鷹や先輩に遊んでもらえばいいじゃん」
二人の言葉など、聞いちゃいない。
「問答無用! せっかく来たんだから、今日は目一杯遊ぶんだから。ね?」
覚悟しといてよ、と巴は極上の笑顔をこちらに向けた。
「なあ小鷹、結局赤月の本命はどっちなわけ?」
「私に訊かれても……」
「やっぱ跡部だろ」
「いや、越前っしょ」
「いやいやここはやっぱり……」
したり顔で忍足が人差し指を立てる。
「二人が牽制しあっとるうちにトンビに横からかっさらわれる」
ぷっと数人吹き出したが、すぐにその表情が凍りつく。
「テメエら、随分楽しそうだな?」
「ちょ、ちょお待て跡部、ギブギブ!」
まあ、とりあえず今は、今のところだけは現状維持で。
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