テニプリST2・Jr選抜決勝
〜伊武深司〜




<試合前>

 あれ? キミって、もう試合終わったんだ。
 見たかったな、キミの試合。
 みっともなく負けたんでしょ? あー、見たかったな、キミの負けるとこ。

 俺の試合はまだっスよ!
 冗談でも負けたなんていわないでください!

 ああ、なんだ。じゃあ、これから負けるんだ?

 い、伊武さんっ!

 冗談だと思う?
 そんな情けない顔してて勝てるわけないだろ?
 キミなんかが緊張するなんて、俺に言わせれば10年早いね。ナマイキなんだよ!
 あれこれ考えたって、キミにできることなんてたかがしれてるんだよ。
 考えても無駄なことなら考えないほうがいいんじゃないの?
 特にキミなんかの場合はさぁ!
 少しは自信を持ったら? キミだって選抜に選ばれた1人なんだからさぁ。
 戦う前にあれこれ考えるのはキミのスタイルじゃないだろ?
 考えなしで向かってくるキミのほうが、対戦相手は怖いんじゃないかな。
 もし対戦相手が俺だったら、そう思うよ。無茶するキミのほうが怖いってさ。

 伊武さんが……俺を?

 もし対戦するときになってもいまみたいな顔していたら……。
 遠慮なく勝たせてもらうから。
 緊張してるキミのほうが俺には都合がいいからね。
 そのときは、恨まないでよ。

 ……簡単には勝たせないっスよ。
 たとえ伊武さん相手でも、俺、遠慮しないっス!

 なーんだ。緊張もなくなっちゃったのか。ツマラナイなぁ……。
 もうすぐ試合が始まるみたいだ。
 俺は勝つつもりだけど、キミも頑張りなよ。

 うっす!
 心配かけてすみませんでした!



<対戦前>

 ここまでキミが勝ち残るなんてさ、ずいぶんと組み合わせに恵まれたんだね。
 ……ま、キミも強くなったってことかなぁ。

 伊武さんと戦うまで負けられなかったんス。

 残念だねー。隼人。
 悪いけど、勝たせてもらうから。

 そんなのわからねえっスよ!
 勝つのは……俺っス!

 負ける気ないんだ。ずいぶん自信があるんだね。
 でも、ナマイキだって言わないよ。
 ……いまのキミには本当にそれだけの実力があるみたいだから。
 じゃあね。
 先にコートへ行ってるよ。

 伊武さん……最初から本気だな。
 こりゃあ、俺も覚悟しねぇと。全力でいくぜ!



<対戦後>

 あー、強いなー、キミってさー。
 この俺が負けるんだからさぁ。
 ウソみたいだよねー。

 俺……勝ったんスか? ってことは……?

 キミって、性格悪いの? 俺に勝ったことを自慢したいの?
 キミの勝ちだよ。優勝だよ。

 俺が、優勝……それも伊武さんに勝って……。

 何度も言わせないでくれるかな。
 ああ、そうだよ。俺に勝ったから優勝したんだよ。
 俺に勝つぐらいなんだから、優勝しても当然なんだけどね。
 でなきゃ俺が負けるわけが……。

 そうっスね……。
 伊武さんとの試合、それだけの価値があったっス。

 勝った相手への気配り?
 そういうのって、迷惑なんだけど。
 ……いや、違うみたいだね。
 あの試合を冷静に見たから、そういう感想を持ったんだろうな。
 変わったよ、キミはさ。
 初めて会った頃のキミはさぁ、勝ち負けにしか興味ないのかって思っていたよ。
 まさか試合の価値を言うようになるなんてね。驚いたよ、本当にさ。
 ちゃんと言ってなかったね。
 優勝おめでとう、隼人。

 ありがとうございます! 伊武さん!!




語り長っ!
でもなんだかいい事言ってますよ、伊武。
「優勝だよ」って言ったときの非常に不機嫌な口調が忘れられませんが(^^;)。正直だ……。

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