まるで電池が切れたようだな。 そんなことを手塚は思った。
休憩時間が終了しても姿を現さないので探しに出て見れば巴はこんなところで眠りこんでいる。
起こそうかと肩に手を伸ばしかけて、やめた。
ただでさえ男子と同じ練習を行っているミクスド女子の負担は大きい。 それなの巴はにさらに自主練習まで行うことが多い。 あきらかにオーバーワークだ。 大事になる前に調整をしなければと思っていたので丁度いい。 起こせば休まずに練習に全力で参加するのは目に見えているのだ。
ただ、このまま眠っていては身体を冷やす。 そう判断して自分の上着をそっと彼女の身体にかける。
と、ふいに彼女が口を開いた。
「手塚部長……」
「なんだ」
半分以上寝言だろうと判断しつつも返事をする。 もし起きたのだったら彼女の場合この状況だと呑気に呼びかける前に跳ね起きるだろうから。
寝言に名前が出るということは自分が夢に登場しているのだろうか。 そう思うと少々面映い。
しかし手塚に返ってきたのはあまりといえばあんまりな言葉だった。
「…の、鬼……」 「…………」
今しがた貸した上着をひっぺがしてたたき起こした上にグラウンド10周を命じてやろうかと一瞬思ったがそのままその場を去った。 実行したら本当に鬼だ。
「あ、手塚。 モエりん、見つからなかったのかい?」
単独で戻ってきた手塚に不二が声をかける。 と、すごい形相でこちらに向きなおられた。
「不二」 「…なに?」 「俺は鬼か」 「……今の顔はちょっと」
数日、妙に手塚に覇気がなかった原因を知っているものは少ない。
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