「そりゃ聖ルドルフのヤツとはスクールで一緒に練習してるからまあわかんだけどさあ……」
昼食後に淹れてきたお茶をテーブルに置いて腰を下ろしつつ、菊丸が呟いた。
その視線の先には別テーブルで食事をする巴の姿がある。
「なんであんなに他校の奴らと仲いいんだろ?」
一緒にテーブルを囲んでいるのは聖ルドルフだけでなく氷帝や立海、六角や四天までいる。
菊丸のむいている方向に目をやった大石が苦笑する。
「多彩な顔ぶれだな、確かに」
「嫌われてるよりはいいんじゃないの?」
「ものめずらしいだけじゃないっすか」
一方、こちらは青学で固まって昼食を摂っていたわけだが。
面白くもなさそうに呟いたリョーマに、桃城がふと思い出した事を口にする。
「そういや、合宿始まってすぐの頃にも氷帝のメンツに囲まれてたっけな。
越前、ほっといていいのかぁ?」
「……別に関係ないスから」
リョーマが不機嫌そうにそっぽを向く。
茶化されている現状が原因か目に見える光景が原因かは本人のみぞ知る。
「けど越前、うかうかしてると取り返しがつかなくなるかも知れないよ」
「なにそれ、どーゆー意味?」
不二の言葉にリョーマではなく菊丸が反応する。
とはいえ食事を終えたリョーマに席を立つ様子が見られないのは興味があるからとも思えるが。
「この間裕太に聞いたんだけどね。
……観月が聖ルドルフに来ないかって誘ってるらしいよ、赤月を」
それまで苦笑を浮かべながら会話を聞いていた河村が飲んでいたお茶を気管につまらせ盛大にむせた。
「転校って事か?
おい、それは洒落にならないんじゃないのか」
「で、何々モエりんは乗り気なワケ?」
「さあ、そこまではボクにもちょっと」
黄金ペアに詰め寄られた不二が意味深な笑みを浮かべながらさらりとかわす。
不二にかわされた二人の視線は示し合わせたかのようにリョーマの方を向いた。
リョーマも驚いたような顔で不二の方を向いている。
「……俺は、興味ないっすから」
慌てて憮然とした表情を取り繕うと、席を立つ。
歩き出したところでテーブルの角に足を思い切りぶつけたがかろうじて無表情を装って立ち去った。
「って、メチャクチャ気になってんじゃねえか」
「分かりやすいよね、越前も」
リョーマの背中を見送りながらそんな事を言っていると、今まで無言だった手塚が突然口を開いた。
「不二、実際のところはどうなんだ」
「え? いや、ゴメン、本当にボクが知ってるのはそこまでだから」
「そうか」
そして、また黙る。
その場にいた全員がまさか、とは思ったがさすがに口に出せない。
……こちらはまた分かりにくいんだけど、ひょっとしたらひょっとして。
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