談話室で大きな笑い声があがった。
嬌声、というやつだ。
女三人集まればかしましい、とはよく言ったものである。
部屋の端と端どころか廊下にいても聞こえそうなそれにその場にいた何人かはあからさまに嫌そうな顔をする。
まあそんな些細な反応など気付いてもらえるわけもなく、この喧騒から逃れるには自らが退散するしかないのだが。
もっとも、それを耳にして眉をしかめるものばかりでもない。
「女の子の声は華やかでいいよねえ」
やにさがった顔でそんなことをのたまうのは千石である。
千石の視線の先に目をやり、同意するように笑みを浮かべたのは柳生だ。
「うちの原くんもいますね。
ミクスドの女子は皆仲がいいようでなによりです」
「ほう、そりゃ珍しいのう」
その言葉どおり、原のアタマ一つ抜きでた姿が見える。
最も当然のことながら大声を上げているのは彼女ではなく、青学の1年二人が主であるが。
「なに、あっちのグループが気になるんやったら混ざってきたらええやん」
事も無げに言い放ったのは白石だ。
苦笑を浮かべながら千石が手を横に振る。
「いやー、そうしたいのはやまやまだけど、さすがに女の子だけで親交を温めてるとこを邪魔はできないでしょ」
「なに言うてんねん」
「え?」
指差され、もう一度よくくだんのグループを見る。
女子の群れの奥、原の向こう側。
「よくよく聞いてみると茶色い声も混じっとるの」
「……明らかに我々と同じユニフォームですね、あれは」
絶句した千石に代わるように女子の声をかき消すほどの大声が響き渡る。
「小春! おらん思たらなにこないなところで女子に混ざってんねん!」
「あ、一氏さんこんにちはー」
「あらユウくん、一緒に混ざる?」
「混ざるかーっ!
ヅラまでかぶって紛れ込みおって!」
「あ、これ? おニュー。似合う〜?」
室内のやかましさは倍増した。
「…………」
「千石くん、あれは女子とはちゃうで」
「……だね。
けど完全に混ざりこんでたねー。ある意味羨ましいなぁ」
そういいきれる千石もある意味大物だ、と残りの3人は思ったけれど黙っておいた。
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