あ、あのー、今月の14日なんだけど…… え? あ、俺の誕生日? そうじゃなくて、って、いやそうなんだけど、確かに。 あ、ありがとう。 ……まいったな…………いや、こっちの話。 気にしないで。 あの、バレンタインだろ、14日って。 キミは、誰かにチョコレートあげたり、するのかな。 その、できれば、俺にもらえないかな、って。うん。 ……ダメかな? |
よう。いい夜だな。まさに聖夜ってヤツ? え、今? さあ、どこにいると思う。 ハッハッ、怒んなって。 案外近いかもよ? ……なんか今夜は星がキレーだからさ、 なんとなくオマエと話したくなって。 ん? ああ、キレーだぜ。 窓開けてみな。 月がないからかな。 都会でも割合良く見えるだろ。 まあ普段星なんか見ねえから本当はいつもと同じなのかもしんねえけど、な。 そっか? サンキュ。 けどなー、やっぱり足りねえな。 いやいや星じゃなくて。 声だけじゃ足りない。 ってな訳で今からそっち行くわ。 カギ、開けといて? |
大阪からクリスマスプレゼント! 中身は眠れない夜に男前サンタの美声、かな。 って待って、切らんといてや。 ……軽い冗談やん。 ほんまに切られるかと思たわ。 まあでも、実際用事はないんやけどな。 ええやろ、別に。 たまにはこんな無駄話も。 生活全て合理的、なんて性に合わんし。 自分の声聴いて、こうやって無駄話して。 そういうんも悪ない、そう思わへん? |
よう。 ああ、そうだ。 今日は一日くだらねぇ付き合いに縛られてる。 まだ続いてるからな。 うんざりするぜ。 あ? バーカ。 だからお前に電話してんだろうが。 この俺様がお前の声を聴きたいってんだ。 光栄に思え。 ……まあ正直な話、お前の声を聴いていて気が休まる訳ではないがな。 落ち着け、耳元で大声を出すな。 最後まで聞け。 別に気が休まる訳じゃねえが……気が楽になる。 お前と話していると、な。 そうか? 誉めてやったつもりだが。 ――ん? ああ、わかった。すぐ行く。 そろそろ行かなくちゃならないから切るぞ。 ああ、そうだ。ひとつ言い忘れていた。 ……メリークリスマス。 |
もしもし。 その声は周助か。 ああ、俺だ。 悪いが、母さんはいるか。……それと巴も。 そうか。 なら母さんに伝言しておいてくれないか。 年末年始のことだ。 どうやらクリスマスには帰宅できそうだからな。 巴には別に用はない。 ……いや、随分声を聴いていないから元気かと。 もっとも、手紙は頻繁に届いているが、な。 む? どうして俺の帰国を内密にする必要がある。 驚かせる? いやそれ自体は構わないとしても帰国するまで巴と話すなとはどういう…… 確かに、俺に腹芸は出来ないが話くらいしても……。 お前、単に巴を電話口に出したくないだけじゃないか? あ、ちょっと待て、おい周助! ……切られた……。 |
クリスマス? なんだ、お前キリスト教徒なのか。 違うのならイエス=キリストの聖誕祭なんて関係ないだろう。 ……。 なんだ、その顔は。 別に俺はクリスマスに浮かれてる奴等が全員キリスト教徒だなんて思ってる訳じゃないぞ。 ただ、俺は聖誕祭だからといって浮かれ騒ぐつもりはないと言ってるんだ。 だから、その顔を止めろ。 別に構わないだろう。 クリスマスなんか俺には関係ないが、 別に何もなくてもお前には付き合ってやるよ。 いつでも、な。 それでも不満か? |
何か、用途があるのかこんなものに。 ……まあ、いい。 欲しいのならやる。 お前にとっては、必要なのだろう? む? どうかしたか。 欲しいと言ったのは、お前だろう。 どうして急にそんな顔をする。 お前の機嫌を損ねるようなことを言ったおぼえはないぞ。 だから、なんだと言うんだ。 言ってくれん事には俺にはわからん。 …………第二ボタンの、意味? |
ああ、うん。 もう少しだな。 ……第二ボタン? いや、別に今のところ誰かにあげる予定はないよ。 そう、誰にも。 というか、ね。 君が欲しいって言ってくれるのを、俺は待ってるんだけど。 ああ。 そうだよ。 気が付かなかった? だと思った。 それが卒業までの一番の心残りだったんだ。 言ってくれるかな? 『第二ボタンをください』って。 |
くだらねえ。 こんなちっぽけなボタンがどうだと言うんだ。 おい、別にやらねえとも言ってないだろうが。 早まるな。 今さら、そんなものを欲しがるのが不思議なだけだ。 ま、欲しけりゃくれてやる。 制服ごとだってな。 くだらねえが、 まあそういう馬鹿げた風習に参加してやるのも、……悪くない。 |