「お、こんなところにいやがったのか」
休憩時間も終わりに近づいているというのに姿の見えない巴が気になっていたのだが、巴は木陰で昼寝の真っ最中であった。 幹にもたれかかって安らかな寝息を立てている。
「まったく、呑気なヤツだぜ……」
と、その時、ふいにうつむき加減の巴のつむじが視界に入った。 そういえばこうやって巴を見下ろすことなんて普段はできない。 一緒に歩いていたり、座っていたりする時には癪なことに巴の目線は向日のそれよりも少し上にあるのだから。
……なんか、よくわかんねぇけど、イラつく。
「ホレ、巴、起きろ!」
半ば八つ当たり気味に乱暴に揺り起こすと、巴はぼんやりを瞼を開く。
「……あれ、向日、さん……?」 「もう練習、始まっぞ」 「…あ、本物!?」
急にぱっちりと目が開く。 そして驚いたような顔で座ったままこちらを見あげている。
こうやって、巴に見あげられる事も、初めてである。
「どこにオレのニセモノがいるんだよ」 「あ、いやいや、そうではなくってですね。 夢の中にも向日さんがいたんで、目を醒ましたらまた目の前にいたのにビックリして……」
照れたように笑いながら、巴が立ち上がる。
あっという間に、いつもの構図。
「……ちぇ」
大きくなりてぇな。 少なくとも、コイツよりデカく。
「え、何か言いましたか? 向日さん?」 「なんでもねぇよ。 っていうかオレの夢ってどんなだったんだよ」 「…………そ、それはヒミツです!」
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