朝か。 瞼を開き、一人思う。 監房内でも最も地下の奥深くに特別に作られたこの独房には、その深さ故に光さえ届くことは無い。 その中で時間を感じることが出来るのは三度の食事と、自分の体内時計、それだけである。 それでも、毎日毎日暗闇の中で変化も無い生活を送っていると、その間隔すらも鈍ってくる。 それを防ぐためにも、ロベリアは日中は決して瞳を閉じない。 皮肉なことに、娑婆にいるときには夜が生活の中心であるのに、独房の中では全くの逆なのである。 大きく伸びをし、ひとつ欠伸をする。 退屈だ。 牢の中に入ったのは別に今回が初めてではないのに、いつもの百倍は退屈に感じる。 それもその筈だ。 こんなに規則正しく、まじめに囚人生活を送ったことは無いからだ。 「192455631号」 そう、自分を呼ぶ声がして、朝食が運ばれてくる。 ここでは囚人は皆番号で呼ばれる。 基本的に名前で呼ばれることは無い。 そもそも、特別牢に収監されているロベリアは、この食事時以外に人と接することすらないのだが。 食事を運んできた看守に今日の日付を尋ねる。 これも、今回牢に入ったときから出来た習慣だ。 あと何日。 毎日、指折り数える。 たったニ年。 懲役千年だったことを思えばバカみたいに短い懲役期間だ。 桁違いにも程がある。 それでも、二年。 これをすぐ、と思えるほどロベリアは老成してはいない。 特に二十代の二年は貴重だ、そう思う。 「アイツは、26か……」 ぽつり、と一人呟く。 二年たってこの牢獄から出たとき、自分は変わっているのだろうか。 それはわからない。 だけれど、何故か、アイツは変わらないような気がする。 二年、いや、五年十年経ってもアイツは変わらないような気がする。 いつまでたってもバカみたいな理想論を振りかざしているのだろう、そう思う。 だから、アタシはここにいる。 二年の歳月を恐れないで、キレイな身体になって、 そしてアンタを手に入れる為に。 ……バカな話だ。 -----Happy birthday!----- |