サモナイX・夜会話集

〜ザイツ〜


第六章・後 第七章 第八章 第九章 第十章 第十一章 第十二章 十四章 第十五章 第十六章 第十八章 ED



第六章・後

まだ、起きていたのか。
ファラ王女。
女王になるかどうか、悩んでいるのか?

ザイツさんはどう思います?
私なんかが女王になって大丈夫でしょうか?

そうだな、軍人としての見解を言わせてもらおう。
今の帝国、皇帝グロッケンに対抗するには、あなたでは、あまりにも頼りなさすぎるだろう。

そうですよね、やっぱり。

しかし、それでも俺はあなたに女王になって欲しいと思う。

えっ!?
どうしてですか?

俺を、帝国という呪縛から解き放ってくれた、ファラ王女。
俺は、あなたの下で戦いたいのだ。

ザイツ…さん。

すまないな、おかしな事を言ったかもしれん。

いいえ、ザイツさんにそう言ってもらえるなんて。
私、すごく心強いです。

よく考えて、返事をする事だ。
失礼する。


(ありがとうございます。私、決心がつきました)


――あなたの為に、戦わせてくれ。――


  ◇  ◇  ◇


ディラン皇子。
少しだけ時間をもらってもいいか?
俺の意見を、言っておきたくてな。

何だい?

ファラ王女の申し出は、引き受けるべきだと俺は考える。
皇帝グロッケンに対し、反感を持っている帝国兵は実は少なくない。
ここで、ディラン皇子が国王として先頭に立ち帝国と戦うことで、悩んでいる帝国兵を味方につけられる可能性がある。

戦略として、俺が国王になった方がいいって事なのか。

そのとおりだ。
しかし、それだけの理由ではない。
ディラン皇子。
俺は、あたなに負けたから帝国を捨てたのではない。
あなたの信念に、かけてみようと思ったからだ。


ザイツ…。

あなたには、人をそういう気にさせる力があるようだ。
だからこそ、国王となりみんなを導いて欲しい。
これが、俺の意見だ。
時間を取ってすまなかった。
後は、皇子がゆっくり考えてくれ。



(無骨な言葉だったけど、あなたの気持ち、十分伝わった。
 ありがとう。ザイツ。
 おかけで、決心がついたよ)


――俺を導いてくれ、ディラン皇子。――


※ファラ編  否定的意見の後で肯定的私見を述べるのは話術テクですな! さすが!(笑)
※ディラン編 おお、さすが言う事が将軍ぽい。……けど敬語じゃないのね。


第七章

ファラ女王。
まだ、起きていたのか。

ザイツさんも、眠らないんですか?

俺は、グラナードの事を考えていた。
まさか、あんな方法で、召喚獣を定着させるとはな。
しかも、ノイン王子を洗脳し利用しているとは…。

お兄様を洗脳したのは、あのグラナードという男なんでしょうか?

ああ、おそらく間違いないだろう。
そんな小細工ができるのは、あの男以外にありえない。
恥ずべき行為だ。
元帝国の将軍として、俺は激しく嫌悪する。
俺が謝ってすむ事ではないが、本当にすまない。
ファラ女王。

ザイツさん。

しかし、希望はある。
先の戦いの時、ノイン王子は自分を取り戻しかけていた。
次は、ラディウスにジャマはさせない。
この俺が、必ずノイン王子を助けよう。
王国のため、そして、ファラ女王、あなたのために。

ありがとう…、ありがとう、ザイツさん。

――俺にできる事ならば、何でもしよう。――


  ◇  ◇  ◇


ディラン皇子。
まだ、起きていたのか。

ああ、今日の事を考えてたんだ。
帝国の召喚実験を、俺達は阻止できなかった。
まさか、あんな方法で魔人をルーンハイムに定着させるなんてな。
ザイツは知っていたのか?
あんな方法があるって。

昔、そんなウワサを聞いた事がある。
召喚戦争時代、帝国の召喚実験中の事故で術者が命を落とし、その影響で、この世界に定着した召喚獣が存在したと。

その召喚獣は、その後どうなったんだ?

さあ、詳しくはしらない。
その実験施設も、焼け落ちてしまったそうだからな。

そうなのか。

あの3人の魔人は、強大な敵として、俺達の前に立ちはだかるだろう。
ディラン皇子、たとえ相手が魔人であろうとも、俺は恐れない。
だから、その時が来たら、遠慮なく命令を出す事だ。
俺に、奴らを斬れ…と。

ザイツ、あなたにだけすべてを任せるつもりはない。
もちろん、俺も一緒に剣を振るおう。

フフフ、国王としては相応しくない言葉だ。
だが、俺は嫌いではない。
共に戦おう、ディラン皇子。


――あなたの命令を待っている――


※ファラ編  ザイツは帝国時代にラディウスを見知っていたんでしょうかね?
※ディラン編 二周目だからこそ分かる複線がこんなところに!


第八章

ファラ女王か。

ザイツさん、大丈夫ですか?
高い所、苦手みたいでしたけど…。

ああ、大分慣れた。
心配してくれて感謝する。
しかし、あなたには情けないところを見られてしまった。

そんなの気にしなくてもいいですよ。

いや、そういうわけにもいくまい。
もし、こういった高い場所にいる時に敵に襲われたら、大変だからな。

だったら、そういう時は私がザイツさんを守ってあげますよ。

えっ!?

守られっぱなしは申しわけないと思うし…。
それに、仲間なんですから助け合わないと。

フフフ、武人として生きてきたが、そんな事を言われたのは初めてだ。

あ、すみません。
気を悪くしちゃいましたか?

いいや、そんな事はない。
むしろ、うれしく思っている。
その時は、頼む。
そう言うべきなのだろうな。

はい、任せてください。
ザイツさん。

――俺を守ると言ったのは、あなたが初めてだ。――


  ◇  ◇  ◇


ディラン皇子は、平気のようだな。

平気?
ああ、高い所の事か。

俺は、どうも苦手なのだ。
足がすくんでしまってな。

ザイツにも、弱点があったんだな。

武人として、情けない。

そんな、大袈裟に考える事ないって。
誰にだって、弱点のひとつやふたつ、あるんだから。
少しくらい高い所が苦手だからって、問題じゃない。
ザイツは、立派な武人だよ。
俺が保証するよ。

ディラン皇子…。
ありがとう。
とは言っても、いつまでも弱点を弱点としていては、武人の名折れ。
これを機会に、高い場所を克服する事を誓おう。
もう一度、礼を言う。
皇子が、俺をそんな気にさせてくれた。
ありがとう。


(ザイツって、本当に根っからの武人なんだな)


――高い所など、怖くなど………ない。――


※ファラ編  高いところが怖い割には怖い場所(ハインラインの腕)から登場してるよザイツさん(笑)。
※ディラン編 分かる、分かるよザイツさん!


第九章

だいぶ、高い所にも慣れたようだ。
考え事をする余裕ができたのだからな。

何を考えてたんですか?

帝国が、何のためにマナの門を破壊したかだ。
その意図が、まるで想像がつかない。

確かにそうですよね。

少なくとも、帝国の民が望んでいる事ではないな。

えっ?

意外かもしれないが、帝国の民のほとんどは戦いを望んでいない。
陛下が恐ろしくて口には出せないだろうが、王国との和平を望んでいるはずだ。
ファラ女王、身勝手な頼みではあるが聞いてくれ。
もし、戦いに勝利した後は帝国の民を苦しめないで欲しいのだ。

そんなの、当たり前じゃないですか。
誰も悲しい思いをしない世界を、私は目指してるんです。

ありがとう、ファラ女王。
あなたのような方の下で戦える事を、俺は誇りに思う。


――あなたなら帝国を変える事ができる。――


  ◇  ◇  ◇


ザイツ。
丁度良かった。
ザイツに相談したかったんだ。

何だ? ディラン皇子。

父上、いや、皇帝グロッケンの、目的だ。
今日のマナの門の破壊は、帝国にどんな意味があるのか、俺には分からない。
あのまま、マナが暴走してたら、帝国の民も大変な事になっていた。
なのにどうして?

もはや、皇帝陛下には帝国の民が見えていないのかもしれないな。
セレスティア侵攻を決めた事も、その証拠だ。
確かに帝国の人間はランカスタの民に対し抵抗がないわけではない。
だが、セレスティアとの和平については、みんなが続く事を望んでいた。

そうだったのか。

ディラン皇子。帝国は問題の多い国だが、民が悪いわけではない。
我々が、目的を果たし、帝国に勝利した後には…。
帝国の民の事も、少しは考えてもらえないか?

ああ、もちろん。
帝国と王国が、本当の意味で仲良く暮らせる世界。
それが、俺の目指す未来なんだ。

やはり、あなたは王になるべき人物なのかもしれない。
あなたの下で戦える事、俺は光栄に思う。


――あなたが皇帝になれば、世界は変わる。――


※ディラン編 国王ではいかんですか。ところで今回もハインラインの上のはずですが平気?
※ファラ編  ザイツ、高い所もう慣れたんだ…早いな。


第十章

ファラ女王。
まだ、起きていたのだな。
良かった、これで礼が言える。

礼?

帝国の脱走兵を、快く受け入れてくれたこと、感謝している。
追い返されたり捕虜にされたりしても、文句は言えない身なのにな。

そんな事ありません。
みんな、自分の国の間違いを認めて来てくれたんです。
それって、すごく勇気のある決断だと思います。
そんな彼らを、追い返したりなんかできません。

あなたは本当に優しい方だ。
あなたの下には、これからもたくさんの兵がついていく事だろう。
これまで、人の上に立つ者に必要なのは、圧倒的なまでの力だと俺は思ってきた。
だが、それは間違っていたようだ。
あなたのような方に、出会えて良かった。

ザイツ…さん。

脱走兵達の活躍は期待していてくれ。
自分達の祖国の間違いを正すため、全力で戦うだろう。
もちろん、この俺もそうだがな。


私も、ザイツさんと出会えて良かったです。

──あなたは優しく、本当に強い方だ。――


  ◇  ◇  ◇


どうしたんだ?
ザイツ。

少し、夜風にでも当たろうと思ってな。
アメリアと、ファングの事で、少し昔を思い出したのだ。

昔?

そう、アメリアと同じく、俺が召喚戦争に参加していた時の事だ。
俺も、何人ものランカスタをこの手にかけた。

!!!

俺を憎むランカスタの民も、少なくはないだろうな。

知らなかったよ。ザイツ。

まだ若かった俺は、これが帝国のためと信じ、戦った。
そして、力尽き倒れた。
目覚めると、そこはランカスタの集落だった。
傷ついた俺を救ってくれたのは、敵であるランカスタの民だった。
傷が治り、集落を出る時に、俺は集落の長老に尋ねた。
どうして、俺を助けたのだと。

長老は、何て答えたんだ?

ランカスタが敵ではない。
そんな可能性を、学んで欲しかった…と。
にもかかわらず、俺はずっとグロッケンの言いなりになっていた。
どうしようもないバカかもしれぬな、俺は。

そんな事はない。
ザイツ。
そんな経験があったからこそ、ザイツは帝国が間違っている事に気付いた。
そして、俺達の味方になったんだ。

…ありがとう、ディラン皇子。


――あなたに許されれば、もう何も恐れはしない。――


※ファラ編  ファラには脱走兵の話しかしないのね……。
※ディラン編 まだ若かったってアナタまだ26歳でしょ?(苦笑)


第十一章

ファラ女王、まだ起きていたのだな。

ザイツさん、今日は本当にごめんなさい。
勝手に、城を飛び出したりしてしまって。

いや、いくら帝国のワナが心配だったとはいえ、ノイン王子の情報を前に足踏みした俺も悪かった。
こちらこそ、謝ろう。
ときに、ファラ女王。
兄であるノイン王子が戻ってきたからには…やはり、国王の座をゆずり渡すつもりなのか?

はい、最初からそのつもりでしたから。

そう…か。

お兄様が国王になると、何か良くない事があるんですか?

いや、そんな事はない。
王国の民の士気を上げるためにも、ノイン王子が国王となるのが一番だろう。
ただ、この俺が少し残念に思っただけだ。
できれば、これからもあなたの下で、戦い続けたかったから。

えっ…。

フッ、忘れてくれ。
おかしな事を言ったな。
誰が国王となろうと、この国のために戦うと誓った気持ちは変わらない。
これからも、全力を尽くす事を約束しよう。

──これからも、あなたの為に力を尽くそう。──


  ◇  ◇  ◇


探していた、ディラン皇子。
あなたに、伝えておきたい事があった。
これは、俺と、そして、こちらについた帝国兵達、全員の気持ちだ。

何なんだ?

ディラン皇子は、ノイン皇子に国王の座を譲り渡すつもりなのだろう。

ああ、そのつもりだ。
それが、当然の事だからな。

ディラン皇子には、このまま国王を続けて欲しい。
それが、俺や彼らの本心だ。
しかし、たとえディラン皇子が国王でなくなっても、俺達は、これまでと変わらず尽力しようと思う。
それが、ディラン皇子が理想とする未来を勝ち取るためなのだから。

…ありがとう、ザイツ。
頼もしいよ。

それだけを、伝えておきたかった。
失礼する。

(俺だって、国王でなくなったからって楽をするつもりはない
 ノイン王子の下で、戦い続けるつもりだ。頼りにしている。ザイツ)

――俺にとっての王は、ディラン皇子、あなただ。――


※ファラ編  どんだけファラに惚れこんでるんだ。
※ディラン編 まあ、嫌な言い方をすればディランは帝国の人間ですからね。


第十二章

ザイツ…さん。

ここにいたのか、ファラ女王。

ごめんなさい。
勝手にお城を出てしまって。

仕方ないだろう。
あんな事があったのだからな。

本当に、優しいお兄様だったの。
いつだって、私の事を心配してくれてね。
それは、最後まで変わらなかった。
私を安心させようと、ムリして笑顔まで見せてくれて…。

それは、少し違うと思う。

えっ?

あなたの兄、ノイン王子が見せた笑顔、あれは、本物だったと思う。
あの時、ノイン王子は満足していたんじゃないだろうか?
大切な妹であるあなたを、守れた事に。

お兄…様。

俺には、その気持ちがよく分かる。
あなたを守りたいという気持ちは、俺も同じだからな。
ファラ女王がここにいる事は、しばらくみんなには黙っていよう。
気持ちの整理がついたら、戻ってくるといい。

あなたを信じ、俺はいつまでも待っている。

ありがとう、ザイツさん。

──俺もあなたを、守りたい。──


  ◇  ◇  ◇


まだ、起きていたのか。
ディラン皇子。

何か、眠れなくてな。
そうだ、帝国にいたころの、ノイン王子の事を聞かせてくれないか?

残念ながら、皇帝グロッケンはノイン王子を大切には扱っていなかった。
ほとんど、城に幽閉したままだった。
それでも、ノイン王子の周りにはたくさんの人が集まっていた。
みんなが、ノイン王子の人間性にひかれたのだろう。

ノイン王子は、本当に素晴らしい人間だったんだな。
どうして、そんな人間があんな事にならなきゃならなかったんだ?
どうして…。

ディラン皇子、嘆く気持ちは分かる。だが、今はそんな場合ではない。
ノイン王子に託されたセレスティアを守り、帝国に戦い勝利する。
それが、残された者の役目だと俺は考える。

ああ、ザイツの言うとおりだ。
嘆いている場合じゃない。
帝国の野望を打ち砕き、ノイン王子の望んでいた平和な世界を作ろう。


――俺達には悲しむヒマさえないのだな。――


※ファラ編  ザイツ、さすが大人の対応〜。惚れ惚れ。
※ディラン編 初めてノインという人間の側面が見えた気がしました。


第十四章

ファラ女王も、さぞや驚いたのだろうな。
ラディウスの正体が、ディラン皇子の双子の弟だという事に。

はい、想像もしてませんでした。
ザイツさんは知ってたんですか?

知っていたら、こんなに驚いてはいない。
皇子が双子だったなど、聞いた事もなかった。

そうなんですか。

知っていたのは、王宮のごく一部だけ…。
それ以外には、ずっと秘密にされてきたのだろう。

でも、それって可哀相な事ですね。
まるで、自分の存在を認められていないみたいで。

あなたは本当に優しい方だ。
その優しさが、ラディウスの心に通じれば良いのだが…。
フン、俺らしくもないな。
こんな事を考えるなんて。
あなたと一緒にいて、俺も少し優しい心を持つようになったのかもな。

ううん、ザイツさんは最初から優しい人でしたよ。

フフフ、帝国の将軍として恐れられていた俺が、そんな事を言われるとは。
でも、悪くない気分だ。

──あなたがこの俺を変えてくれたんだな。──


  ◇  ◇  ◇


ザイツ、ありがとう。
お礼を言いたかったんだ。

何をだ?

敵である父を、召喚の塔の近くに葬ってくれたじゃないか。

礼を言われる事ではない。
俺にとっては、かつての主だ。
あの場所に、捨てておくなどできない。

父は、間違った夢を見ていたんだろうな。
そして今、弟ラディウスも同じ夢を見ている。
止めなければならない。
兄として、帝国の皇子として。

ディラン皇子、前にも言ったが、俺の命はあなたに預けてある。
思う存分、使ってくれ。
それが、俺の喜びだ。

ザイツ、ありがとう。


――この命、あなたの為にある。――


※ファラ編  初めっから情を捨てきれない武将だったよ!(笑)
※ディラン編 まあ、腐ってもかつての主君ですからそらほったらかしには……ねえ?


第十五章

眠れないようだな、ファラ女王。

明日の戦いで、すべてが終わります。
私達にとっては、負けられない戦い。
そう思うと…、不安で不安でたまらなくなるんです。
こんなんじゃ、ダメですよね。
私が女王なんだから、しっかりしなくちゃなのに。

そんな事はない、未来を背負った戦いだ。不安になるのは当然だ。
もちろん、この俺もな。

えっ、ザイツさんが!?

俺の心も、決して鉄でできてるわけではないからな。
だけど、それは恥じる事ではないと俺は思う。
この不安は、絶対に負けられないという強い想い。
その、裏返しなのだからな。

…そうですね。

あなたの言うとおり、この戦いが最後となるだろう。
だから、これだけは言っておきたい。
俺に、意義のある戦場を与えてくれた事、心から感謝している。
ありがとう、ファラ女王。 ──あなたの為に戦える事が、俺の誇りだ。──


  ◇  ◇  ◇


とうとう、明日だな。
ディラン皇子。

ザイツ。俺達は、勝てるだろうか?
将軍としての意見を、聞かせて欲しい。

…数十名の兵士がこちら側についたとはいえ、帝国はいまだ強大。
兵士の数では、向こうの方がはるか上だ。

そうか。

しかし、皇帝グロッケンが死に、突然の皇子の登場。
帝国内が、混乱しているのは間違いない。
兵士達も、自分達の守るべきものが分かっていないだろう。
だが、こちらは違う。
戦争を終わらせ、平和な世界を作る。
そんな目標を掲げるディラン皇子の下、兵士達は一丸となっている。
それは、数の差などものともしない大きな力となるはずだ。

ありがとう。
その言葉、心強いよ。
ザイツ、この戦いに勝とう。
このルーンハイムに暮らすすべての民のために。

――あなたとなら、どんな不可能も可能にできる。――


※ファラ編  ディラン編で大見得切ってたけど不安は不安だったのね。
※ディラン編 冷静なんだか贔屓目なんだか。


第十六章

ついに、終わったな。
ファラ女王。
思えば、厳しい戦いの連続だったが、ついに勝利を手にした。
心からの賛辞を、あなたに送りたい。

ザイツさん、あなたが力を貸してくれたおかげです。
そうじゃなかったら、とてもこんなところまでこられませんでした。
ありがとう、ザイツさん。

俺には、もったいない言葉だな。

ザイツさんは、やっぱり帝国に残るんですよね。
ディランが、新しい帝国を作る手助けをするんですよね。

本来ならば、そうすべきなのだろうな。
しかし、恥を覚悟であなたに頼みたい。
このまま、王国へ連れていってもらえないか?
ファラ女王、俺はあなたに忠誠を誓った。
これからも、それを貫きたいと思う。
あなたの側にいる事が、今の俺の願いなのだ。

ザイツさんがそう言ってくれるなら、私は大歓迎です。
これからも、私に力を貸してくださいね。

感謝する、ファラ女王よ。

──あなたの側にいる事が、俺の願いだ。──


  ◇  ◇  ◇


ディラン皇子、長きに渡る戦い。
ご苦労だったな。
帝国の新しい皇帝として、これからもよろしく頼む。

ザイツ。皇帝になると宣言したものの、まだ少し迷っている。
俺は、このまま皇帝になっていいんだろうか?
もっと他にふさわしい人物がいるんじゃないか?

あなたよりも、ふさわしい人物などどこにもいやしない。
その証拠が、ここから見える帝都の様子だ。

えっ?

あれだけの戦いがあったにも関わらず、街は静けさを取り戻している。
帝国の民が、ディラン皇子を認め、安心しているからだ。
あなた以外の人物が皇帝になったら、暴動が起こるだろう。

そう…か。
俺はまだまだ未熟だ。
だから、ザイツ。
あなたの力を貸して欲しい。

言われなくても、そのつもりだった。
あなたと共に、新しい帝国を作っていけること。
俺は、嬉しく思う。


――あなたと共に、歩んでいこう。――


※ファラ編  ザイツ、王国に来てくれるんだ……! 忠誠心強いなぁ!
※ディラン編 そらこの期に及んで別の皇帝がたったら暴動だろうよ……。


第十八章

帝国の次は、女神クラヴィスか。
なかなか、戦いから解放してはもらえないな。

でも、私は思うんです。
これは、運命じゃないかって。
かつて、女神クラヴィスと争った女神ファーライトの魂が、私には宿っています。
そんな私が、再びクラヴィスと対決する事になったのだから。

俺は、そうは思わない。

えっ?

ファラ女王、あなたは平和を愛し、戦争を終わらせようと全力で戦った。
あなたのその強い想いと、すべての民に対する愛がここに導いたのだと思う。
女神ファーライトの魂が宿っている事、それを重荷に思う必要はない。
あなたはあなたの信念で最後の戦いを迎える。
それだけの事なのだから。

ザイツ…さん。

皇帝の野望を満足させるためだけに戦っていたこの俺に、人々を守るための戦場を与えてくれた事を、心から感謝している。
だからこそ、明日は生涯最高の働きをお見せしよう。
この俺が心を許したただひとりの女性であるあなたのために。

ザイツさんに、そんな事を言ってもらえるなんて、とてもうれしいです。
最後の戦いを終わらせて、一緒に戻ってきましょう。
必ず。

ああ、必ず。

──俺が心を許せるのは、あなただけだ。──


  ◇  ◇  ◇


まさか、最後には女神を相手にする事になるとはな。
正直、想像もしていなかった。

この戦いに勝たなければ、ルーンハイムに未来はない。
すべての命が、消え去る事になる。
そう考えると、正直俺は怖いんだ。

フフフ、何を言っている。
ディラン皇子。
あなたと共にしてきた戦いは、どれも困難で…。
そして、どれも負けられないものばかりだった。
最後もまた、それと同じだけの事だ。

確かに、ザイツの言うとおりだな。
どの戦いも困難で、負けられないものばかりだった。
それでも勝ち続けられたのは、ザイツ。あなたがいたからだ。
あなたの勇猛さが、俺を奮い立たせてくれた。
あなたこそ、本当の武人だ。
俺は、尊敬するよ。

もったいない言葉、感謝するぞ。

ザイツ、この戦いに勝とう。
俺達の剣で、ルーンハイムの未来を勝ち取るんだ。

――あなたのために戦える事、それが俺の誇りだ。――


※ファラ編  運命論は私も嫌いだ。
※ディラン編 なんやかや言うてもザイツはずっと何気にディランにタメ口ですな。フレンドリー……?


ED

ファラ女王、ただ今、帝国より戻った。
手紙は、ディラン皇帝に確かに渡した。
ファラ女王の提案する、エルドガ要塞の非武装化、ディラン皇帝も賛成だそうだ。

ゆくゆくは、両国の民が自由に行き来できるようにしたいと思っています。

いずれ、そうなるだろう。
素晴らしい事だと思う。

でも、ザイツさん。
大丈夫でしたか?

何がだ?

ザイツさんは帝国に戻らず私の手助けをしてくれています。
その事で、何か言われたりしませんでしたか?

フフフ、古参の大臣やかつての部下達からは戻ってくるよう説得された。
争いが終わり、反逆者でなくなった今、帝国でその力を使うべきだとな。
確かに、新皇帝の力になりたいという気持ちはある。
だが、王国を離れる事はできない。
俺、ザイツ・エンドージはファラ女王、あなたを愛してしまったのだからな。

ザイツさん…。

──愛する女性のためならば、俺は誰よりも強くあろう。ファラ女王。──


  ◇  ◇  ◇


これは陛下、わざわざ来てくれたのか。

ザイツ、二人の時はこれまでどおりでいいよ。
何だか緊張するから。

そうだな、ディラン皇子。

エルドガ要塞の非武装化は進んでいるのか?

ああ、残っていた砲台もすべて解体し片付けた。
いずれは、要塞自体にも手を入れようと思っている。

ザイツ、俺は、帝国の民も王国の民も、さらにはアークランドの住民もが…。
自由に、行き来できるようにしたいと思ってるんだ。

素晴らしい事だと俺は思う。
ぜひ、そうあるべきだ。
頭の固い大臣達は反対していたようだが、関係ない。
ディラン皇子の言うとおり、これからの世界にこんな物は必要ないだろう。

すまないな、大変な仕事ばかり任せてしまって。
俺が皇帝としてやっていられるのも、ザイツ、あなたの助けがあるからだ。
あなたがいなければ、帝国の古参の大臣達に追い出されていただろう。
本当に、ありがとう。

何を言う、ディラン皇子。
あなたの目指す帝国の未来は俺の夢でもある。
俺の力で良ければ、いくらでも使ってくれ。
あなたと、新しい帝国を作っていける事が、俺の一番の喜びなのだからな。


――ディラン皇子。俺は、これからもあなたの剣となろう。――


※ファラ編  きっと帝国では「将軍、ロリコンだったんだ…」ってウワサされてるよ!
※ディラン編 よく見てみりゃ『陛下』って呼んでてもタメ口じゃねえか!(笑)



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