サモナイX・夜会話集

〜ルーガ〜


第六章・後 第七章 第八章 第九章 第十章 第十一章 第十二章 十四章 第十五章
 
第十六章 第十八章 ED





第六章・後

ボーヤ、返事は決まったのかい?

いや、まだ悩んでる。
なあ、ルーガ。
ちょっと聞いていいか?

何をだい?

ルーガは、どうしてローングランドのリーダーになったんだ?

前のリーダーが引退する時、押しつけられたのさ。


断らなかったのか?

そんな事できやしないよ。
引き受けなきゃならない鉄の決まりだからね。
でも、何とかなったよ。
ファングや、たくさんの仲間が助けてくれたからね。
あんたも、そんな仲間がたくさんいるんだ。
何とかなるんじゃないの。
何と言っても、その中にはアタシもいるんだしね。

ルーガ。

ま、まだ時間はあるんだ。
ゆっくり考えな。


(ルーガの言うとおりだ。俺には、仲間がいる。
 よし、決心がついたぞ)


――ボーヤ、アタシ達がついてるよ。――


  ◇  ◇  ◇


悩んでるのかい?
女王になるかどうか。

はい、そうです。

まあ、そうだろうね。
簡単に決められる事じゃないさね。
お嬢ちゃんを見てると、昔を思い出すよ。
ローングランドのリーダーになった時の事を。
前のリーダーに押しつけられてね、心底困ったよ。

やっぱり、嫌だったんですか?

アタシなんかに務まるのかって、不安で仕方なかったのさ。
だけど、指名されたら引き受けなきゃならないのがローングランドの決まり。
飛べないリーダーの誕生ってわけさ。

でも、ルーガさんはこうやってローングランドを率いてるんだし。
やっぱり、素質があったんですよ。

そんなんじゃない。
ただ、助けてくれる仲間がたくさんいただけさ。
そして、お嬢ちゃん。
あんたにも、そんな仲間がたくさんいるんだよ。
思いきって引き受けるのも、いいんじゃないのかい?
その度胸の良さに、バカな男連中が惚れちまったりしてね。

そ、そんな!

ハハハ、冗談さ。
じゃあね、お嬢ちゃん。
明日の返事、楽しみにしてるよ。


ルーガさん、ありがとう。
私、決心がつきました。


――アタシ達を信じて良いんだよ。――


※ディラン編 彼女もリーダーでしたねえ。ここ以降仕事してないけど…(笑)。
※ファラ編  ああ、ファングとか?(笑)←決め付け


第七章

今日は残念だったね、ボーヤ。
せっかく、こんな遠くまで来たってのに、実験は成功しちまうんだからさ。

本当に、すまない。

ちょっとボーヤ。
あんたが謝る事ないさ。
こういう事だって、時にはある。いちいち気にするもんじゃないよ。
それに、あのグラナードっていけすかない宰相の次の目的地が分かったんだ。

マナの門…だな。

それは、ここまで来たから知りえた情報さ。
誇っていいと思うよ。

ありがとう、ルーガ。

お礼なんていいさ。
アタシは、思った事を言ってだけだからね。
さ、宿に戻ろうかね。
ランカスタってのは寒さに弱いんだよ。
明日、鼻水たらしてたら笑い者になっちまうしね。


(手がかりは、マナの門という言葉
 よし、何としてでも突き止めてやるぞ)


――今日負けたって、明日勝てばいいのさ。――


  ◇  ◇  ◇


正直、今日は驚いたよ。
まさか、王国の王子が帝国に寝返ってたなんて。

違います!
あれは、帝国の…。

分かってるよ。
すべて洗脳のせいなんだろ。
それをした帝国に、アタシは吐き気がしてるよ。
兄と妹を、戦わせてんだからね。
悪趣味にもほどがある。

でも、洗脳が解ければまた元のお兄様に戻ってくれます。
私は絶対に、お兄様を助けます!

…いい顔だ。
それでこそ、アタシらのリーダーだ。
ノイン王子、必ず助け出そうじゃないか。
アタシも、いくらでも力を貸すよ。

ありがとうございます、ルーガさん。

――アンタのそういう強いところ、好きだね。――


※ディラン編 いや、私もイヤミかと思ったよ?(笑)
※ファラ編  そっか、兄妹争わせてるって視点もありましたね……(目からウロコ)


第八章

風が気持ちいいね。
ボーヤもそう思うだろ?
空を飛ぶってのは、こんな気持ちなのかね。
だとしたら、ファング達がちょっとうらやましいね。

ルーガは、ランカスタの民だけど、翼を持ってないよな。
翼のない種族なのか?

あれ? ファングから聞いてないのかい?
アタシの体には、半分しかランカスタの血が流れてないのさ。
父親は、人間だったからね。

そうだったのか。
全然知らなかったよ。

今でこそ、アタシみたいなのも増えてるけど、昔は本当に珍しくてね。
それで、いろいろと苦労したもんさね。
ボーヤみたいな人間が、たくさんいてくれたら良かったのにね。

えっ?

いや、何でもないよ。
ちょっと口が滑っただけさ。
それじゃあね、ボーヤ。


(俺みたいな人間がたくさんいたら良かった。どういう意味だろ?)


――もっと早く、ボーヤに会いたかったよ。――


  ◇  ◇  ◇


もしかして、お嬢ちゃんもアタシと同じかい?
何だか眠るのがもったいないような気がするんだろ?

ええ。だって、こうやって空を飛ぶ経験ってなかなかできないから。

アタシも同じさ。
つい、ワクワクしてしまってね。
ほら、アタシには翼がないだろ? 当然飛んだ事なんかないのさ。
ま、仕方ないんだけどね。
父親が人間なんだから。

えっ、そうだったんですか?

物心ついた時には、母親しかいなかったから父親の顔も知らないけどね。
ちなみに、ルーガって名前にはランカスタの古い言葉で架け橋って意味があるんだ。
母親が言ってたよ。
アタシの父親も、この名前が気に入ってたって。

ルーガさんに、人間とランカスタの架け橋になって欲しかったんですね。

だとしたら、とんでもない期待をされちまってるよ。
アタシには、到底ムリな事さ。

ううん、私はそうは思いません。
ルーガさんなら、きっとなれると思いますよ。

そうかい?
お嬢ちゃんに言われると、そんな気がしてくるね。
戦いが終わったら、そういった道を歩くのも悪くないかも…。
おっと、長話しちまったね。
さすがにそろそろ寝ないと明日がつらいよ。
おやすみ、お嬢ちゃん。


ルーガさんが架け橋となって、帝国の人間もランカスタと仲良くなれたら…。
すごく、ステキな事だな。
それって。

――お嬢ちゃんも、アタシ達の架け橋さ。――


※ディラン編 え、ハーフはハーフで単に種族問題で飛べないのかと思ってた……だって他の人尻尾ないよ。
        それはそれとして飛べないリーダーと片羽根のサブリーダーってローングランドはすげえいい組織だと思う。
        強いはずだ。
※ファラ編   ちゃんと父親のいい話を遺してくれていたんですね、ルーガのお母さんは。


第九章

さすがのアタシも、今日ばかしはヤバイって思ったよ。
あのまま、マナが暴走してたら、アタシ達の命はなかったんだろうね。

ああ、確かにそうだな。

あの、あくり〜んって子には足を向けて寝られないよ。

あくり〜んが何者なのか?
ルーガはどう思う?

そーさね、不思議な子だよ。
宝珠が光って、出てきたって言うんだろ?
しかも、マナの門をいとも簡単に直しちまったそうじゃないか。
そんな事ができるなんて、もしかしたら、女神様なのかもしれないね。

えっ!

ほら、あくり〜んって女神アクリーンと同じ名前だろ?
ま、さすがにそれはないかね。
あんなお子様が女神だなんてちょっとムリがあるよ。
あの子の正体が何であれ、アタシ達の味方だってのは確かなんだ。
とりあえず、それで良しとしようじゃないか。
さて、アタシもヘトヘトだしそろそろ寝るとしようかね。
じゃあね、ボーヤ。


(そうだな。あくり〜んは俺達の味方。それだけで今は十分だ)


――あの子が女神………まさかね。――


  ◇  ◇  ◇


あくり〜んって子は眠ったのかい?

ええ、もうぐっすり。

本当に仲がいいよね、お嬢ちゃんとあの子。
まるで、本当の姉妹みたいじゃないか。

本当ですか?
それはうれしいな。

でも、そんな事はないさね。
あの子は普通じゃないんだから。
とりあえず連れてきてるけど、これからどうするつもりなんだい?

一緒に、いようと思います。
あくり〜んちゃんが、私達を助けてくれたんだし、それに、悪い子じゃないのは確かですから。

不思議だね、お嬢ちゃんが言うと間違いないような気がするよ。
まあ、アタシもそうするのが一番だと思うよ。
見かけはあんなだけど、頼もしい仲間になってくれそうだからね。

はい。


――アタシはお嬢ちゃんを信じるよ。――


※ディラン編 まさかじゃないよルーガさん。
※ファラ編  ファラを信用しすぎている気がしないでもない。


第十章

考え事かい? ボーヤ。

ルーガは、ファングの過去の事を知ってたのか?

まあ…ね。
アメリアって名前までは知らなかったけど。
まさか、帝国の将軍だったなんてね。
手強い相手だよ、全く。

………俺達は、間違っているんだろうか?

どうしたんだい?
いきなり?

俺達は今、帝国と戦っている。
その戦いによって家族を失った帝国の民もいる。
彼らは、悲しみの中、俺を憎むんだろうか?

そーさね。憎むだろうね。

やっぱり、そうか。

しっかりしな、ボーヤ。
それは仕方のない事なんだ。
それに、この戦いはそんな憎しみの繰り返しを終らせる戦いでもあるんだ。
ボーヤが勝利して、ランカスタと人間が共存できるせかいになったら、そんな憎しみも、これ以上生まれる事もなくなるはずさ。

そうだな。
ありがとう、ルーガ。

そーさね、向けられる憎しみが背負いきれなくなったら、そん時は、アタシが一緒に背負ってやってもいいよ。

え?

ま、どういう意味かは想像にお任せするよ。
フフフ。


――ボーヤの苦しみは、アタシの苦しみさ。――


  ◇  ◇  ◇


今日は、すまなかったね。
ファングがバカしちまって。
一応、あいつの面倒を見てる身として、謝っとくよ。

ルーガさんは、ファングさんの過去を知ってたんですか?

まあ…大体のところはね。
でもランカスタにとっちゃそう珍しい話でもないんだ。
召喚戦争時代、帝国はランカスタの民にヒドイ事をしていたからね。
ローングランドには、つらい過去を背負った連中がゴロゴロしてるよ。

えっ、だけどみんなすごく明るくて…。
それに、ディランが帝国の皇子だって分かっても、誰も何も…。

そりゃあ、わだかまりが何もなかったって言ったらウソになるけど。
ボーヤを責めたところで、どうにもなりゃしないだろ。
それよりは、これからの事を考えた方がいって、みんな分かってるのさ。
まあ、ランカスタの民にはわりと楽天的な気質の奴が多いってのもあるけどね。

これからの事…ですか。

そーだ。
アタシ達は、お嬢ちゃん。
あんたにかけてんだ。
帝国と、ランカスタとの憎しみの歴史を終わらせてくれるんじゃないかって。
力はいくらでも貸すよ。
未来のために、しっかりやっとくれ。

はい、がんばります。
ルーガさん。

──アタシ達の未来は、アンタにかかってるんだよ。――


※ディラン編 覚悟が足りない、って怒られんのかと思った。
※ファラ編  みんなディランと比べてファラには優しいね。あとローングランドすごいね。


第十一章

ボ、ボーヤ。
まだ、起きてたんだね。
ちょっと、アタシと話をしてもらってもいいかい?

別にいいけど、どうかしたのか?

その、今日の事なんだけどね、できれば、忘れてくれるとありがたいんだけど。

今日のこと?

ルオール古城での事さ。
ファングがアタシをからかっただろ?

ああ、幽霊だって言って、ルーガが驚いて…。

わーわーわーわーわー!

そんなに慌てなくていいのに。

アタシ、オバケとか幽霊って奴だけはダメなんだよ。
みっともないだろ?
だから、忘れておくれよ。
な、ボーヤ。

別にそんなみっともない事じゃない。
誰にだって、苦手な物のひとつくらいあるよ。
当たり前の事さ。

ボーヤ…。

だけど、意外だったな。
ローングランドの荒くれ者を束ねるリーダーのルーガが、女の子みたいに、悲鳴あげたんだから。

ボ、ボーヤ!!!

ごめんごめん。
大丈夫、キレイさっぱり忘れるから。
それじゃ、おやすみ。


まったく、このアタシをからかうほどになるなんてね。
いつまでも、ボーヤなんて呼んでられないかもね。
フフフ。


――いつの間にか、ボーヤじゃなくなってたんだね。――


  ◇  ◇  ◇


おや、誰かと思ったらじゃじゃ馬のお嬢ちゃんじゃないかい。
驚いたよ。ノイン王子を助けに城を飛び出していくなんてね。
さすが、アタシが認めてるだけの事はあるよ。

すみません、みんなにご迷惑をかけて。

謝る事はないさ。
時にそういった大胆さも必要だと思うしね。
それに、今回はそのおかげでノイン王子を助けられたんだ。
胸を張りなよ。
お嬢ちゃん。

はい、ルーガさん。

だけど、もうちょっとマシな人選は考えなかったのかい?

えっ?

カタブツに、ワンコにお子様じゃないか。
ワンコが変身するって奇跡が起こったからいいものの、ちょっと頼りないメンツだね。
アタシに声をかけてくれりゃ、ついてってやったのにねえ。
フフフ、まあすんだ事で文句を言ったって始まりゃしないね。
それじゃおやすみ、お嬢ちゃん。


カタブツは、ガーリットね。ワンコは、ムームーでお子様はあくり〜んちゃん。
ルーガさんらしいけど、みんなには聞かせられないな。

――アタシが認めたんだ、胸を張っていいんだよ。――


※ディラン編 他のキャラに比べてルーガだけ話題が違う(笑)。無神経なディランがいいね!
※ファラ編  ついてったらオバケ怖かったくせに……(笑)。しかしガーリット泣くよ!?


第十二章

やっぱり、起きてたんだね。
ボーヤ。
きっと王子の事でも考えて、眠れないんじゃないかって思ってね。

ルーガ、ノイン王子は、どんな思いで亡くなったんだろう?

えっ?

ずっと人質生活を送っていて、やっと帰れると思ったら、洗脳されて操られ、洗脳が解けて故郷に戻ってきた矢先に命を落とすなんて。
きっと、絶望の中で息を引きとったんだろうな。

それは、違うんじゃないかい?
王子が最後に見せた笑顔。
あれは、本物だったじゃないか。
満足して、旅立ったんじゃないかって、アタシは思うよ。
何てったって、最後に大切な妹を守れたんだからね。
それに、王国を託せる人間がいる事に、安心してたんだろうね。

そんな人間がどこに?

ボーヤ、あんただよ。
だから、ボーヤ。
あんたは前へ進まなきゃならない。
こんなとこで、落ち込んでるヒマなんかないんだよ。

…そうだな。よく、分かった。
ありがとう、ルーガ。
ノイン王子の期待は裏切れない。俺は、必ず帝国の野望を打ち砕く。
絶対に…。

――こんな言い方しかできないなんて、アタシも不器用だね。――


  ◇  ◇  ◇


おやおや、ここにいたのかい。
お嬢ちゃん。
おっと、心配はいらないよ。
お嬢ちゃんの事を責めるつもりはないからね。
あんな事があったんだ。
遠くへ行きたくなる気持ちも分かる。

ルーガさん。
私、これからどうすればいいのかな?
私、ちゃんと戦えるかな?
こんなにも力が抜けちゃってるのに。
これじゃ、みんなに迷惑をかけるだけだよね。

お嬢ちゃん、そんな事、気にしなくていいんだよ。
だって、アタシ達は仲間じゃないか。
こんな時なんだ。
いくらでも迷惑をかけてくれりゃいいさ。
アタシ達は信じてるからね。
お嬢ちゃんが、必ず元気になってくれるって事を。

ルーガさん…。

先に行ってるよ。
気持ちが落ちついたら、城に帰ってくればいいさ。

待ってください、私も、私も行きます!

大丈夫なのかい?

はい、大丈夫です。
迷惑はかけちゃうかもしれないけれど、私、がんばります。

そうかい、なら一緒に行こうじゃないか。

──いくらでも迷惑をかけてくれていいのさ。──


※ディラン編 個人的にはこの言い方、好きですけどね。
※ファラ編  ザイツとルーガの対応はスマートな大人のやり方で格好いいな…。


第十四章

あんた、ボーヤだよね。
あの、ラディウスってのと入れ替わってるってのはゴメンだよ。

俺は、正真正銘、帝国のボーヤだよ。ルーガ。

ゴメンゴメン、ちょいとからかっただけさ。
このアタシが、ボーヤとあんなゲス野郎を見間違えるはずがないだろう。

見分けがつくのか?
同じ顔なのに。

ボーヤ、いい事を教えてあげるよ。
男の顔ってのはね、形だけじゃないんだよ。
何か苦難を乗り越える度に、深みが加わっていくんだ。
あのラディウスの顔には、そんなもんは何もありゃしないよ。
自分の境遇にヘソを曲げて、ひねくれてる。
お子ちゃまの顔さ。

なら、俺はどうなんだ?

最初は、世間知らずのボーヤの顔だったさ。
だけど、今じゃすっかり男の顔になってきてるよ。
アタシが、思わず意識しちまうくらいにね。

え?

何でもないよ。
ボーヤにはまだ早い話さ。
そーさね、アタシ達が戦いに勝って、世界が平和になったら…。
アタシも、自分に正直になってみようかね。
ま、とにかく。
そんなだから、ボーヤは負けっこない。
このルーガ様もついてるんだしね。


――アタシがボーヤと………ふふ、悪くないね。――


  ◇  ◇  ◇


どうしたい、お嬢ちゃん。
深刻な顔して考え込んじゃって。
アタシで良ければ話を聞こうじゃないか。

準備はすべて整った。
ラディウスがそう言ってたじゃないですか。
このままだと、今度こそ帝国が女神クラヴィスの力を手に入れてしまう。
私達に、どうにかできるのかなって、そう考えてしまって…。

どうにかできるかじゃない、どうにかするしかないんだよ。お嬢ちゃん。
ラディウスってひねくれボーヤが女神の力なんかを手にしたら…、ろくでもない事になるのは目に見えてる。
王国も、アークランドも、いや、帝国だって不幸になる事だろうさ。
アタシはそんなのまっぴらゴメンだ。
だから、今度こそ奴らのたくらみを終わらせてやるのさ。

ルーガさんは、強いですね。
私もそうならなくちゃ。

そんな事はないさ、そうやって心配するのもお嬢ちゃんのいいとこなんだ。
アタシと二人でバランスが取れりゃそれでいいさ。
お嬢ちゃん、ラディウスの言葉どおり、帝国へ乗り込んでやろうじゃないか。
アタシ達でひねくれボーヤにおしおきをしてやるんだよ。

はい、ルーガさん。

──アタシ達ふたりは、良いコンビかもしれないね。──


※ディラン編 ディラン、『ボーヤ』って訂正しませんよね。いいの?
※ファラ編  短い、短いよ!


第十五章

とうとう、明日だね。
ボーヤ。
正直、ボーヤがここまでくるとは思ってなかったよ。

そうなのか?

ああ、そうさ。
まったく、大したボーヤだよ。

だけど、不安で一杯だよ。
俺達が勝利できるのか。

大丈夫、ボーヤならきっと勝てるさ。
下手な気休めなんかじゃない。
アタシはそんな事を言うガラじゃないからね。
本当に、そう思うんだ。
ボーヤならって。
アタシだけじゃない。
きっとみんなもそう思ってるはずさ。
だから、王国兵もローングランドの戦士も、さらには帝国兵までもが、ボーヤ。あんたに、ついてきてるんだ。

それなら、うれしいな。

ボーヤ、もう何も言わない。
とにかく思いっきりやんな。
ボーヤのすぐ隣には、このアタシが…いるからね。

――惚れた男と戦うってのも、悪いもんじゃないね。――


  ◇  ◇  ◇


やっぱり、起きてたのかい?
不安で不安で眠れない。
そんなとこだろうね。

はい、そうです。
明日の事を考えると、どうしても気持ちが落ちつかなくて…。

やれやれ、しょーがないね。
アタシがとっておきの方法を教えてやろうじゃないか。
お嬢ちゃん、目を閉じな。

えっ?

いいから、目を閉じるんだよ。
ゆっくりと深呼吸しながら、頭に思い浮かべるんだ。
これまで一緒に戦ってきた、仲間達の顔をね。

ディラン、ムームー、ガーリット、ソティナさん、ファングさん、ザイツさん。
エルナディータさんに、あくり〜んちゃん。
それから、ルーガさん。
不思議…です。
気分が、楽になりました。

きいただろ?
これはアタシがよく使ってる方法さ。
まあ、頼りない仲間ばかりだったら、意味のない方法だけどね。

私には、こんなにも頼れる仲間がたくさんいるんですね。
不安で大切なものを見失ってました。
もう、大丈夫です。
王国の民のため、ランカスタの民のため、そして、帝国の民のためにも。
明日の戦い、絶対に勝ちましょう。

──いくらでも頼っておくれよ。──


※ディラン編 さらっと『不安』って言っちゃうのがディランですよね。
※ファラ編  格好いい姐御だね、本当に!


第十六章

興奮冷めやらぬと言ったところかい? ボーヤ。

ああ、これからの事をちょっと考えててさ。
帝国の民が、どうすればランカスタの民に慣れてくれるのかって。

皇帝さんの悩みは尽きないようだね。

ルーガは、アークランドに戻るつもりなのか?

そーさね。でも、もうローングランドもやめようかって思ってるんだ。

どうして?

他に、いたい場所ができちまったのさ。
ボーヤ、あんたの側っていう場所がね。

ええっ!

まだまだ、帝国の住人はランカスタに抵抗があるだろうよ。
アタシの父親は人間だ。
だから、帝国の人間も、抵抗が少ないだろうよ。
慣らしてくのには丁度いいんじゃないのかい?

確かに、そのとおりだけど…。

考えといちゃくれないかい?
アタシは、ボーヤと一緒にいたいと思ってるんだ。
できれば、この先ずっとね。

――ボーヤの隣が、アタシの居場所なのさ。――


  ◇  ◇  ◇


やれやれ、やっと終わったね。
お嬢ちゃん。
正直、危ないと思った事も一度や二度じゃないけど、終わってみればいい思い出さ。

ルーガさん。これまでありがとうございました。
ルーガさんの助けがあったから、ここまでくる事ができました。

よしとくれ、何だか照れるじゃないか。
それに、お礼を言わなきゃならないのはアタシの方だよ。
ランカスタと帝国との争いの歴史。
お嬢ちゃんは、それを終わらせてくれたんだからね。
このままうまくいけば、ローングランドが存在する必要もなくなるだろう。
そしたら、何をして暮らそうかねえ。

だったら、王国に来ませんか?
これからも、ルーガさんにはいろいろ助けて欲しいんです。

うれしい事を言ってくれるじゃないか。
そーさね、こんなアタシの力を必要としてくれるなら。
王国に行くのも、悪くないかもしれないね。

──お嬢ちゃんの力になれるなら、どこにでも行くさ。──


※ディラン編 ほぼ告白ですよね。コレ。帝国に来てくれる発言は個人的にかなり嬉しかったり。
※ファラ編  おおお、ファラ自分でスカウトしちゃうんだ!


第十八章

オヴァドが、さらに大きくなったような気がするよ。
あれが落っこちてきたら、ひとたまりもないね。

このルーンハイムに生きる命を、消させるわけにはいかない。
女神クラヴィスを倒し、オヴァドの衝突を防ぐんだ。

…ボーヤ、あんたは本当大したもんだよ。
女神と一戦交えるってのに、ちっとも迷いがないじゃないか。
さすが、アタシが認めた男だよ。
アタシが、惚れちまっただけの事は…あるよ。

えっ!?

あ〜あ、情けない。
このルーガ様が、人間の坊っちゃんなんかに惚れちまうなんてね。
屈強なローングランドの戦士が周りに一杯いるってのにね。
おかしいったらないよ。

ルーガ…。

アタシが惚れちまったくらいいい男なんだ。
女神なんぞに負けたら、しょうちしないよ。ボーヤ。
絶対に勝って、生きて帰ってくるんだ。
約束だよ。

ああ、分かったよ。ルーガ。
約束だ。
勝って、一緒に帰ってこよう。
俺達のルーンハイムに。

――惚れた男を、死なせやしないさ。――


  ◇  ◇  ◇


何泣きそうな顔してんだい?
せっかくの美人が台無しだよ。
ま、そう言うアタシもひとりでいたら不安でどうにかなりそうなのさ。
だから、ここに来た。
お嬢ちゃんがいるって思ってね。

やっぱり、不安ですよね。
女神が、相手なんですから。

そーさね、よりにもよって相手は女神だからね。
でも、それで言ったらこっちだって負けてないと思うよ。
お子様になると頼りないけど、女神アクリーンが仲間にいるし…。
それに、女神ファーライトの魂が、お嬢ちゃんには宿ってるんだから。

そう…ですよね。

どうやら、それも不安の原因みたいだね。
女神ファーライトの魂が目覚めたらどうなるか?
それを心配してんだろ?

…はい。
世界がこんな時なのに、ダメですよね。

ダメじゃないさ。
心配して当然だとアタシは思うよ。
その事に関しては、正直アタシは何も分からない。
でも、お嬢ちゃんの心が消えてなくなるなんて事はないと思うよ。
お嬢ちゃんは、これからのルーンハイムに必要な人間なんだ。
女神だったら、それぐらい分かるだろうさ。

ありがとうございます。
そう言ってもらえただけで、私はうれしいです。

そうさね、もしどうしても女神様に体が必要なら、アタシの体をあげようかね。
女神ってガラじゃないから向こうから断られるかね?

そんな事ないと思いますよ。
ルーガさんって、キレイだし、素敵だし、美人だし。

そ、そうかい?
何だか照れるじゃないか。

でも、ダメです。
ルーガさんだって、必要な人なんですから。
みんなで戻ってきましょう。
平和になった、ルーンハイムに。

約束だよ、お嬢ちゃん。

──あんたはこの世界に必要なんだよ。──


※ディラン編 おお、格好いいな二人とも! ってか十六話とぶっ続けでみたらディランが鈍すぎて泣ける。
※ファラ編  ルーガが男前すぎて惚れる。


ED

ここからの眺めとも、しばらくはお別れかね。

ルーガ、本当にいいのか?
ローングランドをやめて、帝国に来るなんて。

ああ、いいんだよ。
ボーヤ、あんた皇帝の仕事は大変だろ?
だから、このルーガ様が手助けしてやろうと思ってね。
ローングランドは心配いらないよ。
ファングがちゃんと仕切ってくれるさ。
帝国が脅威でなくなった今、ローングランドの役割も変わっていく。
これからは、帝国との橋渡し的な組織へとなってくだろうよ。
世代交代には、いい機会さ。

でも、ルーガ。
帝国はまだ…。

分かってるよ。まだまだ、反ランカスタの連中が多いって言うんだろ?

ああ、そうだ。王宮内にもランカスタの民を嫌う人間がまだいる。
ルーガに、不快な思いをさせたくはないんだ。
帝国に来るのは、もう少し後にしても…。

心配いらないよ。
そんな事にへこたれるルーガ様じゃないよ。
それに、そんな連中がいるなら、なおさらアタシが行かなきゃね。
半分は人間の血が流れてるアタシに、まずは慣れてもらうんだよ。

何だか、ルーガを利用するみたいで、申しわけがないよ。

いーんだよ。
アタシは、ボーヤの役に立てりゃいいんだ。
惚れた男のために一肌脱ぐのが、女ってもんじゃないかい?

ルーガ…。

さ、行こうじゃないか。
帝国へ。


――惚れた男についてくってのも悪くないもんだよ。ボーヤ。――


  ◇  ◇  ◇


久しぶりにアジトに来たもんだから、何だか懐かしいねぇ。

ルーガさんに、女王の仕事を手伝ってもらえて、私すごく助かってます。
だけど、本当にローングランドをやめちゃって良かったんですか?

気にする事はないさ。
ファングがうまい事やってくれてるし。
それに、帝国との争いがなくなって、ローングランドに大した仕事はないからね。
それよりお嬢ちゃん。アタシ、まだお礼を言ってなかったような気がするよ。

お礼?

すべてのランカスタを代表して言うよ。
300年前、空からやって来たランカスタの民を受け入れてくれた事。
本当に、感謝してるよ。
お嬢ちゃん…いや、女神ファーライト様。

そんな、お礼なんて言われると、何だか申しわけなくなります。
あの時は、本当の意味で受け入れる事はできなかったのだから。

えっ? どういう事だい?

だって、ランカスタと人間の争いが始まってしまったじゃないですか。
私の考えが足りなかったんです。

女神様が、謝る事ないよ。
それは、人間とアタシ達の責任だからね。
それに、結局は女神様のおかげでその争いも終わったんだ。
すべてが丸く収まったって事さ。
そうだろ?

はい、ありがとうございます。

さてと、それじゃ王国に戻ろうかね、女神様。

ルーガさん、女神様はやめてくださいね。
お嬢ちゃんでいいんです。
私は人間として生きる事にしたんですから。

フフフ、そーだったね。

──女神様をお嬢ちゃん呼ばわりか、罰が当たらなきゃいいけどね。──


※ディラン編 帝国に来るのは予想通りとしても次代のリーダーがファングとな!? ルーガは案外尽くす女でしたね。
※ルーガ編  罰を当てるのは神様自身なんだから当たらないよ!



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