「一緒にアメリカに行こうぜ」 ちょっと、予想もしない言葉だった。 「…………アメリカぁ?」 後から思うと、自分でもかなり間の抜けた返答の仕方だったと思う。 「ああ。自分の運がどこまで通用するのか、試してみるのも悪くない。 一緒に来れば、アンタに退屈だけはさせないことを約束するぜ?」 「アメリカ……か……」 はっきりいって英語力に自信はあまりない。 『運だけで受験を乗り切った』と豪語する村雨には聞くだけ無駄と言うものではないだろうか。 しかし。 「行ってみなければ何も分からない、か……。 村雨らしい。それにしても相変わらずの自信だな」 何気なく口にした龍麻の言葉に、ふっ、と村雨が真顔になった。 「自信? バカいうなよ先生」 「えっ?」 「自信なんて、持ったことはねぇ。 いつだって失敗しないか、ビクついている臆病者さ。 虚勢はって、誤魔化してるだけだ。……幻滅したかい?」 そう自嘲気味に言う村雨に、龍麻は首を振った。 そして、微笑みかける。 「……安心した」 初めて聞く、弱音。 本音の気持ち。 「いつだって、村雨は自信満々に見えたから。 一人でも、なんの不自由もないんじゃないかって、……僕がいる必要はないんじゃないかって、よく、そう思ってた」 そして、まっすぐ村雨を見据える。 真摯な瞳。 一番好きな、その表情。 「村雨にとって、僕が必要なのならば、傍にいることで支えになることが出来るのならば、 僕は、どこにだって、行くよ」 「……本当か? 本当だな? よし、絶対に先生を後悔させないからな。 やっぱり、俺はツいてるぜ」 「おい、人の決断を運にすり替えるな」 「何言ってんだ先生。 そもそも俺にとっちゃあ、先生に会えたことが人生最大の、ラッキーなんだぜ?」 そう、これが強運の証し。 自分だけのツキの女神。 〜Fin〜 戻る |