出すことのない手紙。

―――芝村舞―――


善行。

お前がいなくなって数日が経つ。
小隊は意外なほどに平静だ。お前の今までの成果か。


お前の後の指令は、私が継ぐことになった。
ひょっとしたら、出て行く前に指示していったのか?
まあ、そんなことはどうでもよいが。


慣れぬ仕事だ。


先日、指令になって初めての戦闘を行った。
やはり、パイロットのときとはずいぶん勝手が違う。
パイロットとしての腕には自信があるが、指令ともなるとそうも行かぬ。
指示どおりにパイロットやスカウトが動かねば腹も立つし、また焦燥もする。
何とか今回は勝利することが出来たが、次は分からぬ。
指令は、あまり自分自身の身の危険はないが、その分指示する相手が気に掛かってしょうがないな。
自分が指令をすることになって、初めて善行、お前の気持ちを少し理解できたように思う。



元気か。


(以下数行何か書いてあったが上からペンで書きなぐって消去されており判読不能)



お前が何も言わずに出ていった理由は、私にはわからぬ。
分からぬが、
お前が関東で自己を発揮できるのならばそれも良いのではないかと思う。


いつか。
いつかこの長い戦闘が私の生きている間に終わることがあるのならば。


そのときは善行、またお前に会いたいと願う。


芝村 舞






丁寧に封筒の口を閉じ、舞はそれをゴミ箱に投函した。

振り返りもせず、部屋を後にする。
自分のなすべき場所で、成すべき事を果たすために。






あとがき

と、いうわけで舞サイドです。
おいてかれた方としては…と。
舞はしゃべり方が独特なので文章にすると善行より男らしくなってしまいました(笑)。
こんな手紙を書く自分をきっと舞は「芝村らしくないな」と、自嘲することでしょう。
ちなみに、指令は本当に難しいです。
自分が敵中に突っ込むほうがどれほど楽か……。

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